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理想について

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 かつて私という少女は生きる指針を理想に求めた。多分それは本の乱読のせいだ。少女の言行はその理想というものに縛られた。思春期、青年期、中年期まで。しかし私が理想として求めたその中身はエゴイズムそのものだった。それの煽りを受けたのは気の弱い息子だった。思えば私はずいぶん理不尽な要求を彼にしたものだ。理想主義はその強い精神で自己をも他者をも支配しようとする。やがてそんな理想主義はトシと共にだんだん弱まり、近頃の私は「理想も正義も道徳も何ほどのものでもないわい!と思えるようになった。だいたい自分自身でさえあるとは思わなくなった。自分なんて単なる記憶の集積、これでボケたら私なんていなくなる。近頃の私はイエス・キリストの愛、仏の慈悲がありがたく素直に受け取ることができるようになった。トシを取るとはありがたいことだ。宗教なんて理想主義の克服じゃないか、なんて思ったりする。

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 私は孫に甘い。息子が高校生の時と比べると考えられないほど甘い。その孫が小学生のとき父親である息子にこう言ったそうだ。「おばあちゃんって何々しなさいってよく言うよね」と。息子は私に向かって「痛いだろう?」とひとこと・・・。私の自我が砕けた瞬間だった。人間は何歳になっても成長していくものだ。

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